こだわる大人の特選グルメ
気軽に味わえる1軒
ランチや仕事帰りなど時間がないときだからこそ、肩肘張らずにおいしい料理を楽しみたい。
その日の気分に合わせて選べる、通いたくなる魅力溢れる店をご紹介。
四川料理
【高岳】小菜一碟
本格四川の麻婆豆腐は
辛さの調整も可能で万人が楽しめる逸品
 大通りに面した店は、ガラス張りの外観、カウンターのオープンキッチンに、カフェ風のインテリア。構えは四川料理の一般的なイメージとは随分とかけ離れている。四川料理界の若きスター、吉田哲さんがオーナーシェフを務める店は、昨年11月のオープン直後から話題をさらい、今も人気上昇中だ。「コンセプトは自分が行きたい店。ポイントは、調理している様子を間近で見られ、会話もできること。そして何より、本格的な四川料理を気軽に食べられることでした」
 名店『四川飯店』の東京・名古屋で腕を磨き、シンガポールで麻婆豆腐の専門店を立ち上げ成功させた吉田さん。この道に進んだのは、まず調味料の種類の多さから中華に興味を持ち、中でもバラエティ豊かな四川料理に惹かれたからだという。辛さも様々、味も幅広い四川料理に欠かせないのは香辛料。その多くを現地で買い付けており、特に花椒と豆板醤は四川省産のみを使っている。
 そうして作り上げる本格的な四川料理は、夜も気軽に楽しめるが、ランチは税込みで880円とさらにお手軽に。メインは麻婆豆腐、汁なし担々麺、汁あり担々麺の3種類から選べ、ご飯、小鉢、日替わりのスープが付き、ご飯はお替りも自由。麻婆豆腐は、ぐっとくる奥深い旨辛、その後を追いかけてくる程よいしびれ感が魅惑の世界へと誘う。しびれも辛さも程よい加減ゆえ、旨みを舌でしかと感じて味わうことができる。ご飯が進むのはいうまでもない。
 コアなファンが多い汁なし担々麺は、もちもちした平打ちの太麺に旨味たっぷりのソースがよく絡み、カシューナッツの香ばしさがいいアクセントに。濃厚な味わいをフレッシュなサラダですっきりさせ、後味もよいという巧妙さだ。また、ランチには165円で杏仁豆腐をつけられ、ほとんどの人が注文するという。デザートまで手抜きなしのおいしさで締めくくれば、午後の活力も倍増だ。このクオリティ、ボリューム感、満足度にしてこの価格。駅からは少々距離があるが、せっせと足を運ぶ人が多いのもうなずける。
 「辛さの調整もできる限りしますので、お子様連れでもどうぞ」と優しい吉田さん。店名に示された『小菜一碟』(=お安い御用です)の心意気に偽りはない。
上写真:麻婆豆腐は、夜は牛頬肉を使い、昼はスタンダードタイプ。決め手は3年熟成のピーシェン豆板醤。花椒はパウダーとオイルを使用。しびれと熟成された旨辛が溶け合い、クセになる味わいだ。
中写真:四川の漬け物ヤーサイ(青菜の味噌醤油漬け)や黒酢も入った、こってりなのにさっぱりとした不思議な味の「汁なし担担麺」。たっぷりとのせる野菜は、その日のものを黒板で紹介している。
下写真:オーナーシェフの吉田哲さん。1984年生まれ。豊橋市出身。『四川飯店』で中華の鉄人・陳建一さんのもとで10年修業。シンガポールで麻婆豆腐専門店の料理長を務めた後、『小菜一碟』を開店。
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