こだわる大人の特選グルメ
ちょっと足をのばして行きたい郊外のレストラン
そこでしか味わえないひとときを求めて、休日は家族や大事な人と郊外へドライブに出かけたい。
その地の風土を感じながら、知られざる新たな味に出合える珠玉の料理店へ。
フレンチ
【三重・明和町】レストランリュウ
地物の食材をいかした、
器に映える懐石フレンチ
 松阪市に近いのどかな町にあるこのレストランでは、陶芸家でもあるオーナーシェフの小倉龍介さんが、自作の器で懐石料理のエッセンスを取り入れたフランス料理を楽しませてくれる。完全予約制で、料理はコースのみ。昼夜とも一斉スタートが基本だ。
 徹底しているのが地物の食材を使うこと。生まれ故郷で店を持った小倉さんは、自然に恵まれたこの地で、都会のシェフがうらやむ食材を揃えようと決意。
「9割以上が地物で、また、旬でないものを使うことはしません。特に野菜と魚は違いがでます」という小倉さんは、最高の食材を求めて自らも船で釣りに出るほどだ。
 懐石を取り入れた転機は8年ほど前、京都の茶懐石で、「自分は自国の文化を知らない」と痛感したことだった。そして、京都に通い季節の表現を勉強する中、緑のスープを抹茶に見立て、茶碗で出してみたことから陶器に目覚める。窯を構え、自作の器で料理を提供するようになり、今では1年を通し、月替わりの料理をそれに合う器で出している。
 順次登場するコースの料理は、スープ、前菜、リゾット……と続く全7品で構成される。前菜は、日本料理の八寸を自分流にした十寸オードブル。「テーマは地物野菜で、ほとんどが明和町産。遠くても松阪までで、県外のものは絶対使いません」。八寸より大きな十寸皿にポツンポツンと並ぶのは、丹精込めて育てられた野菜一つひとつに敬意を払い、個性をいかして持ち味を引き出す料理であり、皿は季節を映すキャンパスとなっている。
 魚料理は三重ブランドの伊勢真鯛のほか、よいものが釣れたらそれを使う。この日は南伊勢で釣れた甘鯛をカリッとした皮目とぷりっとした食感のポワレに。皿は月ごとの海をテーマにしており、瑠璃色が深い海を連想させる。
 肉料理は松阪牛。フランス料理に最も適した希少部位を、1〜2カ月熟成させ、旨みがはね上がったところを月替わり料理に仕上げる。瞬間燻製は、ふわりと燻製香が立ち上がり、口に運べば柔らかい中に心地よい歯応えが。赤身にほどよく脂が混じり、コクと旨みがあるのにさっぱり。初めて体験する松阪牛の美味だ。
 野菜、魚、そして松阪肉。地域の恵みを豪快さとわび・さびのあるコースでいただけば、心が湧き立ち、生きる元気をもらえる。
上写真:松阪牛のわらde燻製。
2時間以上かけて火入れし、土鍋で燻製にした月ごとに調理法を変える松阪牛。写真は昨年10月の料理で、肉汁を煮詰め、醤油ダレとバター代わりに松阪牛の背脂を加えた特製ソースでいただく。
中写真:甘鯛のポワレと、十寸オードブル。
十寸オードブルは季節によって変わる地元の旬の野菜が主役。9月の十寸皿は瀬戸黒釉十五夜長皿、10月は緋色柿の葉皿、11月は紅葉皿といった具合にその月の景色をイメージしている。甘鯛は熟成後、シンプルに調理し、魚のだしにバジルを利かせたソースと。
下写真:オーナーシェフの小倉龍介さん。
1977年三重県生まれ。ハウステンボスホテルズでフレンチの巨匠・上柿元勝氏に師事し、渡仏。帰国後、ホテルグランヴィア大阪で修業。2006年独立。

※料理は全て¥6,600コースの一例
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