こだわる大人の特選グルメ
ちょっと足をのばして行きたい郊外のレストラン
そこでしか味わえないひとときを求めて、休日は家族や大事な人と郊外へドライブに出かけたい。
その地の風土を感じながら、知られざる新たな味に出合える珠玉の料理店へ。
フレンチ
【三重・松阪】オールド コースト プリュス
老舗バー跡地で味わえる
松阪の食材を活かしたフレンチのひと皿
 近鉄松阪駅からほど近い場所に、松阪牛をワインと共に楽しめるフレンチの名店がある。厨房で腕を振るう世古篤史シェフは、東京や大阪で研鑽を積んだ気鋭の料理人。まるでアートのような鮮やかなひと皿で、客を魅了し続けている。
 例えばランチで提供している「松阪牛のステーキ」は、程よくローストした肉を色とりどりの野菜と共に大皿の半分を使って半円を描くように盛り付ける。その上からマデラ酒を煮詰めた濃厚なソースを全体に。ひと皿の中で最上級の松阪牛の肉の旨味と香り、そして脂の甘みが引き立つよう、付け合わせからソース、盛り付け方まですべて計算されている。「松阪には松阪牛をはじめ、おいしい食材がたくさんあります。そんな素材にフレンチの技法をプラスして味に深みを持たせるのが僕の仕事。華やかな見た目のインパクトはもちろんのこと、料理で表現した味や香りを最大限感じてもらえるような盛り付けを心掛けています」と世古シェフは語る。
 一枚板のカウンターをメインに据えた店の雰囲気がまたいい。聞けば、ここにはかつて約40年続いた『オールド コースト』という地元で名高いバーがあったという。どこか重厚でオーセンティックな雰囲気が漂っているのは、バー時代のなごりだろう。「僕も若い頃、友人と訪れていました。バーが誰からも愛されたのはマスターの人柄そのもの。そんな歴史ある特別な場所を僕が受け継ぐことになった時、この空間はできる限り活かしたいと思ったんです」。世古シェフはそんな思いから、当時のバーの名前に「Plus」の文字を付け加え、現在の店をオープンさせた。だからこの店では、テーブル席から一段下がった最奥のカウンターが一番の特等席。デートはもちろん、ワインバーのような感覚で利用する一人客も多いという。
 今年で6年目を迎える同店は、評判が評判を呼び、昨年には『ミシュランガイド愛知・岐阜・三重2019特別版』にビブグルマンとして紹介された。気鋭の料理人が生み出す上質な一皿を肩ひじ張らずに楽しめる居心地の良さは、『オールドコートプリュス』の新たなマスターとなった気さくなシェフの人柄からきているのかもしれない。
上写真:松阪牛のステーキ。
シェフ自ら厳選したA5等級の松阪牛をマデラソースと共に。ローストした季節の野菜が美しいひと皿を鮮やかに盛り上げている。写真はランチコースのプリフィクスプレートより。ランチは¥3,000~(松阪牛のステーキはプラス¥1,800)
中写真:オマール海老のロースト 焼きナスのピューレ 生姜風味のアメリケーヌソース。
産地から取り寄せた鮮度抜群のオマール海老をロースト。焼きナスのピューレを敷いて、皿を楽しませるように盛り付けをしている。海老の甲殻類とナス、生姜の美味しい組み合わせが多くの人たちを唸らせている。¥3,000
下写真:オーナーシェフの世古篤史さん。調理師専門学校を卒業後、東京・大阪・奈良などでフレンチを学ぶ。地元松阪にフレンチを広めたいとの思いから、2014年に自身の店をオープン。
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