こだわる大人の特選グルメ
ちょっと足をのばして行きたい郊外のレストラン
そこでしか味わえないひとときを求めて、休日は家族や大事な人と郊外へドライブに出かけたい。
その地の風土を感じながら、知られざる新たな味に出合える珠玉の料理店へ。
会席料理
【愛知・西尾】日本料理 いまい
季節の移ろいを膳に表現した、
正統派の会席料理
西尾市街を環状に走る県道319号線沿い。黒板の外壁に白いのれんを垂らした店構えは、小ざっぱりとして気取りなく、車道からでは見過ごしてしまいそうなほど控えめだ。だが、店に一歩入ると印象は一変。細い通路を抜けた先に弁柄色のカウンターがあり、磨き抜かれた厨房が目に飛び込んでくる。隅々まで手入れされた空間はどこか非日常的で、表の喧騒が嘘のよう。凛とした空気に背筋が伸びて、料理への期待感が膨らんでいく。
主人の今井哲太郎さんは、名古屋の『日本料理 せき根』や一宮の『末木』で長年修業を積み、京都の老舗料亭『菊乃井』でも腕を振るった経験を持つなど、技術と経験は折り紙つきだ。碧南市生まれの地元愛から西尾に『いまい』をオープンし7年、地域に愛される店に成長した。「店のコンセプトは“たまに行くならこんな店”。春夏秋冬の食材を楽しんでもらいたい。たまに来ていただくのに気が抜けた料理では申し訳が立たないので、お昼の会席もできる限り最高のものを用意します」と今井さん。完全予約制もそのためで、食材選びから仕込みまで準備に余念がない。
今井さんが作る料理は、季節を写し取る日本料理の王道を行く。メニューは基本的に月替わりで、食材の走り、盛り、名残を意識している。例えば春先なら先付けに春野菜を用いたり、焼き物でフキノトウの天ぷらを出す。「季節の出合いのものを大事にしたい」と四季の移ろいを存分に楽しめるコースを用意している。
上写真:ホタルイカと春野菜で春らしい先付。ボイルしたホタルイカに、菜の花やこごみなどの春野菜とホタテ、ウニを添えた。さわやかな土佐酢のジュレと共に。
中写真:椀物は、白身魚のすり身に卵白、ヤマイモ、西尾産のアサリを加えて蒸し焼きにしたしんじょう。尾札部産の真昆布と鹿児島産のカツオ節でとった一番だしもしみじみと美味。
下写真:小ざっぱりとして、気取りのない黒板の外観。控えめだが、凛とした雰囲気だ。
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