こだわる大人の特選グルメ
ちょっと足をのばして行きたい郊外のレストラン
そこでしか味わえないひとときを求めて、休日は家族や大事な人と郊外へドライブに出かけたい。
その地の風土を感じながら、知られざる新たな味に出合える珠玉の料理店へ。
日本料理
【岐阜・中津川】萩乃屋
地元の野菜と旬の素材で魅せる
絶品日本料理
 いにしえの風情溢れる馬籠宿で、43年続く和食の店『萩乃屋』。昔懐かしい佇まいの店内では、いずれの部屋からも雄峰・恵那山を望める絶好のロケーションを誇る。
 大阪の名店で研鑽した二代目主人の安藤雅嗣さんは「中津川は野菜のレベルが高い」と絶賛。「特に里芋やカブなどの冬野菜がいい。この辺りで採れる里芋は味が濃いので、だしをきかせた炊き合わせで提供します。カブはこれまで京都から仕入れていましたが、今は甘くて瑞々しい地元のものを使っています」と話し、これらの野菜を中心とした和食を手掛ける。
 「肉料理は他の料理が目立たなくなるほど存在感が強く、コストもそれなりにかかります。地元の野菜のおいしさがきちんと伝わる料理で、できるだけリーズナブルに楽しんでもらいたい」と語る安藤さん。野菜の旨味を際立たせるために、だしは旨味が際立つ本枯節の厚削りを使用し、また刺身にも野菜を添えてひと仕事。昆布締めにしたヒラメにカブや紅芯大根を挟むなど、野菜と魚の相性を考えながらアイデア豊かなひと品に仕上げる。
 もちろん、ほかの食材も徹底したこだわりだ。塩焼きなどで供する鮎は、長年にわたって信頼のおける漁師から直接仕入れる。「鮎は3日生かすと味が落ちてしまうので、釣った後すぐに氷で締めて冷凍してもらいます。山菜や筍は採取の名人や木曽の八百屋から直接仕入れますよ。例えばワラビひとつでも、針葉樹の陰で生えているものの方が瑞々しく歯ごたえがある。また朝掘ったばかりの筍は、香りも味も抜群です」と太鼓判を押す。「いい食材を手に入れるには、人との関係が大切。料理に使う素材は、誰がどのように手掛けたものなのかが重要だと考えています」と語る。
 こうした素材の話や料理の説明など、安藤さんの楽しい話もごちそうのひとつだ。手間暇かけた料理と上質なホスピタリティが評判を呼び、海外からの観光客が多く訪れるという点も頷ける。古き良き佇まいで、山々の借景を楽しみながら美味に舌鼓。まさに大人の休日にふさわしい一軒だ。
上写真:焼八寸。酒粕風味をきかせた鰆のもろみ幽庵、スモークサーモンの寿司、豆腐の味噌漬け、すだちごぼう、菊菜と菊花の酢びたし。
中写真:銀杏のしんじょう。食感を残して半分すり潰したものと細かく刻んだ銀杏をしんじょうに仕上げ、本枯節から丁寧に取っただしと共に椀仕立てにしたひと品。
下写真:店内はすべて個室のみで、その全室にテーブルが設えられている。縁側の向こうには緑豊かな中庭と彼方に恵那山を望む。
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