こだわる大人の特選グルメ
ちょっと足をのばして行きたい郊外のレストラン
そこでしか味わえないひとときを求めて、休日は家族や大事な人と郊外へドライブに出かけたい。
その地の風土を感じながら、知られざる新たな味に出合える珠玉の料理店へ。
蕎麦
【長野・伊那】こやぶ竹聲庵
信州そば発祥の地で味わう、郷土色豊かな蕎麦
 長野県伊那市。信州そば発祥の地と言われ、そのルーツは奈良時代にまで溯り、修験道の開祖とされる役小角(えんのおづの)が残した蕎麦の実に端を発する。ゆえに付けられた名は、行者そば。辛味大根の搾り汁に、焼き味噌を入れた“辛つゆ”で食したそうで、今もその伝統を伝えようとする蕎麦屋が市内各所に点在している。今回、目指す店は、伊那市の北西部。本店は45年続く『こやぶ』。『竹聲庵』とは言い得て妙で、緑滴る静かな林の中に、ひっそりと庵風の建物が佇んでいる。
 「本店では二八蕎麦を出していますが、こちらは十割の生蕎麦。伊那の蕎麦の味や香りをしっかり楽しんでいただけると思います」と話すのは二代目の伊藤顕さん。厳選した地元の玄蕎麦を石臼で挽きぐるみにして、早朝から何十食も打ち上げる。「十割は繋がりにくいので、水回しに気を配ります。その日の気候によって水分量を調整して、しっかり捏ねるとコシの強い十割になるんですよ。しかも粉がいいので、味と香りも格別です」
 つゆは昔ながらの辛つゆではないものの、薬味に大根おろしと焼き味噌も添えられる。食べ方は自由だが、まずはそのまま、次に大根おろしを加えて、最後に焼き味噌を溶かすのがおすすめだ。また、蕎麦料理尽くしの生一本コース(事前予約で2名様〜)もあるので、ゆっくり腰を据えて、郷土の味を堪能したい。
上写真:ざるそば¥1,030。玄蕎麦を外皮がついたまま石臼で挽くため、野趣豊かな味わい。
中写真:大きな窓の向こうに鬱蒼と茂る林が見える座敷席。
下写真:「蕎麦と空間の両方を楽しんでほしい」と話す二代目。
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