こだわる大人の特選グルメ
ちょっと足をのばして行きたい郊外のレストラン
そこでしか味わえないひとときを求めて、休日は家族や大事な人と郊外へドライブに出かけたい。
その地の風土を感じながら、知られざる新たな味に出合える珠玉の料理店へ。
フレンチ
【愛知・豊橋】オー・クリウール・ドゥ・ヴァン
多様な地域食材を駆使し、
伝統のフレンチを表現
 シェフの中澤智弘さんとオーナーソムリエの土井康司さんは、かつて豊橋のフレンチの草分け的な店、『ボレロ吾妻家』で共に働いていた。当時は「将来どんな店をつくりたい?」と、よく夢を語り合った。その後、それぞれにスキルを磨いて熟成させ、2009年に二人の夢を実現させたのがこの店だ。開店から今年で10年。現在はスーシェフの北川智夫さんを加えて3人チームとなり、そして、豊橋の名店と呼ばれるように。「ベースはフランスの伝統料理や郷土料理。その基本を大切にしながら、この地域の食材を使って、四季を巡ります」と話す中澤さんは、本格フレンチ以外の経験も生かし、カフェなどの要素も取り入れる柔軟さも併せ持っている。野菜は地元の農園・農家のもの。豊川などにあるJAの直売所へはシェフが毎日出勤途中に立ち寄り、朝採れを手に入れる。その味をストレートに味わえるのがコースの前菜で選べる「クリュディテ・ヴァリエ」。有機栽培のものも数多く、一つひとつ、野菜本来の濃厚な味わいが強く印象を刻む。
 魚介は、伊良湖や静岡の舞阪などの漁港で買い付け直配されるものが大半で、市場よりも鮮度が高い。肉類は地元のブランドや旬のものを厳選。一方、時にはフランスや北海道など、各地の食材も取り入れることで変化もつける。豊橋の銘柄豚である秀麗豚にはマスタードソース。真鯛にはブールブランソース。フレンチの伝統ソースでおいしさはまた別のものになる。定番 のソースも、甘みや酸味、濃さなど、絶妙なコントロールで素材を生かすバランス感覚は、お見事。また、この店の核となる「信頼」を映し出すのが、料理とワインの素晴らしいマリアージュだ。フランス全土の約300種類を揃えるワインの中心は、昔ながらの自然な造り方のもの。「こだわっているわけではなく、おいしいものを選んだ結果です。その状態をじっくり観察し、最もよいタイミングでサーヴします」と土井さん。
 穏やかな時間が流れるこの店では、時代が変わっても変わらない、本物に出合うことができる。それは変わらない友情のように、じわっと心に染みてくる。
上写真:秀麗豚のローストマスタードソース。豊橋が誇るブランド豚を、マスタードとジュ・ド・ヴォー、バターで作るソース、ナスやトマトなどを煮込むバリフールの付け合わせと。
中写真:真鯛のポワレブールブランソース。舞阪港でこの朝水揚げされた真鯛を、白ワインとビネガー、エシャロットで作るレディクションとバターを使うブールブランソースで。
下写真:店内はセピアカラーの写真のような雰囲気。洗練と温もり、しっとりした空気感のバランスが心地いい。店内にワインセラーもある。
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