こだわる大人の特選グルメ
大人のとっておきレストラン
誕生日や記念日などの特別な日は、心地よい空間でとびきりおいしい料理と共に迎えたい。
そんな願いを叶えてくれる、とっておきのレストランをご紹介。
創作和食
【星ヶ丘】和N
「発酵」と「乾燥」が生み出す
地産地消にこだわる創作和食
 自らを「バクテリアマスター」と称する店主の野村泰広さんが挑戦するのは、新しい和食の世界。その店『和N』では、「発酵」および「乾燥」を取り入れた料理を、会席スタイルのコースで展開する。
 最初の一撃がかなり衝撃的だ。小石の上にオブジェのように点在するちょっと妖しげな品々を、指でつまんでいただく、名付けて「フィンガーフード八寸」。枯葉のように見えるのは発酵・乾燥させたキャベツで金時人参の黒ニンニクソース和えをはさんだサンドイッチ。「はさむものは毎日替わります。指先の感触、バリバリという音や食感も楽しんでください」
 奇抜さに目が行くが、店のメインテーマはとても健全。「健康とおいしさの両立」だと言う。野村さんは、料理人として「本当においしく、身体にもいいもの」を探求する中で「発酵」に興味を持ち、独学で勉強した。
 すべての調味料を手作りしており、その数20種類以上。酢・味噌・醤油・麹をはじめ、各種の食材と塩麴などを合わせるオリジナル調味料も開発し、店内にある発酵室ではそれらが熟成中。あわせてサンドイッチに使うキャベツなど、食材自体も乳酸菌で発酵させている。添加物は一切使わない。また、自然と調和でしながら健康な体をつくるマクロビオティックの哲学「身土不二」(“身体と環境は切り離せない”という意味)に基づき、東海3県の旬の食材だけを使う。魚介は日々野の中央卸売市場で近海のものを、野菜は週に1回、ランチを休んで三河地域の農家を一周して仕入れてくる。
 同様にマクロビの「一物全体」(“丸ごと食べる”という意味)に基づき、野菜の皮やヘタなどもほとんど使いきる。そこでも活躍するのが「乾燥」だ。パウダーやチップにして料理のアクセントにすることで、思いがけない食材同士のマリアージュも誕生する。「発酵や乾燥によって新しい味が生まれ、ここにしかない味に出合っていただけます」
 ランチのコースは¥3,450~の3種類で、平日は数量限定¥1,800のミニ会席プレートがある。そのお供にはぜひとも「コンブチャ」(グラス¥700)を。「昆布茶」とはまったく異なる中国由来の発酵ドリンクで、レモンやパセリ、大葉などの多彩なフレーバーの香り、爽やかな味わいが、発酵・乾燥のマジックをかけた新しい料理をよりおいしくしてくれる。
上写真:発酵キャベツチップのサンドイッチ、麹ビーフジャーキー、鶏皮チップ、篠島産曼陀羅海老の魚醤和えinスナップえんどうが盛り込まれた、フィンガーフード八寸。
中写真:篠島産タコの麹漬けときんかんのセロリビネガードレッシング和え。タコは冷凍して細胞を壊し、麹で1週間発酵させた後、麹オイルで加熱。柔らかさと歯応えの矛盾の両立を実現。
下写真:店主の野村泰広さん。1989年生まれ。名古屋市出身。フレンチ、イタリアン、和食と幅広いジャンルを経験する中、独学で生物学を学び、菌の生体を研究。昨年7月『和N』をオープン。

※料理はすべて¥5,900~コースの一例
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