“うめもと”とだけ記された看板は、まるで表札のような佇まい。あまりに控えめで、ふと通り過ぎてしまいそうな店構えである。その落ち着いた風情の扉を開けてまず目に映るのは、漆塗りの艶やかなカウンター。そのカウンターの奥に立つのは、シェフを務める梅本明憲さんだ。
「お客様に日本の四季を感じていただくため、国産の食材を中心に使っています」。そう話す梅本さんだが、以前はイタリアンをはじめとした様々なジャンルの店で研鑽を積んできた経歴の持ち主だ。その経験を活かし、枠にとらわれない料理をコースで展開する。例えば、毎朝ひくという昆布と鮪節の一番出汁はジュレに。これを大間の鮪のカルパッチョに添え、シンプルながらも食材の味わいを堪能できる一品へと変化させる。ほかにも、炭火焼したサンマにそうめんを添えた一品など、独創的でありながら調和のとれた料理が味わえる。
このようにジャンルの枠を超えた『うめもと』の料理に合わせる酒は、日本酒から焼酎、ワインと幅広く揃う。供される料理にどの酒を選ぶかも、楽しみのひとつといえよう。「料理に対する感じ方は、人それぞれだと思います。ですが、訪れてくださったお客様に私の料理に対する思いをお伝えできれば」。一品一品に込められた梅本さんの思いも、じっくりと堪能したい。

上写真：「大間の鮪のカルパッチョと北海道産生うに」。コースの一例。
中写真：肉厚な穴子を串打ちして炙った「穴子の炭火焼」。コースの一例。
下写真：店は大通りを一本入った場所にひっそりと佇む。