金山駅近くにある閑静な裏路地に、「名古屋で本当に旨い天ぷらが食べられる店」として、舌の肥えた客が足を運ぶ『西むら』がある。ここは千種区本山の『創意和食 野むら』といった日本料理店で修業を積み、天ぷらの奥深さに魅了された店主の西村雄誠さんが「独立するなら天ぷらで」との思いを実現させた店だ。
　昼夜共に、口取り肴にはじまり、お造り、天ぷら7〜９種、天茶、デザートと続くコースが味わえる。そのどこを切り取っても西村流が貫かれた料理は、ミシュランガイドと並ぶ影響力を持つレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」に掲載されるほどの実力を誇る。
　天ぷらを提供するうえで、西村さんがいちばん大切にしているのは食材だ。有名産地やブランドに固執することなく、信頼のおける魚屋や八百屋に理想を伝え、西村さんの目利きに叶ったもののみを仕入れる。天ダネごとに衣を替え、食材の旨味を最大限引き出すことに注力した独自配合の油は、揚げる食材や個体差によって温度を変えるという。
　また、揚げる前の食材の温度を常温にすることで、サクッとした衣と食材本来の香りや旨味を感じられるように仕立てている。緻密に計算し、王道を進化させた天ぷらは、新鮮な感動を覚えるものばかり。昼席、夜席共に１日３組限定なので、このスペシャルな味を心ゆくまで堪能したい。

上写真：サクッとした衣に包まれた、ハンガリー産フォアグラの天ぷら。口に入れた瞬間にとろけ、少し甘めの自家製ダレとわさびのアクセントが絶妙だ。
中写真：土鍋で炊いたご飯の上に、海老のかき揚げをのせた「天茶セット」。最初はそのままで、次は薬味と共に、最後はだしを加えて、変化する３つの味が堪能できる。
下写真：黒を基調としたL字型のカウンター席。そこに置かれた深紅の折敷が印象的な店内は、まさに大人の空間。