こだわる大人の特選グルメ
大人のとっておきレストラン
誕生日や記念日などの特別な日は、心地よい空間でとびきりおいしい料理と共に迎えたい。
そんな願いを叶えてくれる、とっておきのレストランをご紹介。
寿司
【栄】鮨なか澤
受け継いだものを守り、正統な鮨を伝える
 伏見・御園座の北で46年続いた老舗『寿し銀』。その歴史の半分以上、26年間を共にし、大将の右腕だった中澤和夫さんが、同じ場所にオープンしたのが『鮨 なか澤』だ。そこにあるのは伝統か、革新か。
 中澤さんは静かな口調で思いを語る。「最後の弟子として、師匠から受け継いだものを大切に守りつつ、自分なりのものを作っていきたい。また、価値観が多様化する中で、正統な鮨や魚の美味しさを伝えていくことが自分の使命だと思っています」
 受け継いだのは、まず鮨屋の生命線とも言える仕入れルート。信頼できる魚屋との関係をそのまま繋いでいる。もちろん江戸前鮨の味も。整然と並ぶ、本鮪やトロ、天然車海老、小肌、〆鯖などのネタ。素早く握って、煮切り醤油をひと塗り、つけ台へ。ほんのり温かいシャリがネタの旨みと見事に融合し、米粒の心地いい食感を残しながらスッとほどける。特徴的なのが、半身を半分に折りたたんで握る穴子。二重になった身がボリューム感を持たせながらコンパクトにまとまり、表面は香ばしくサックリ、舌にのせた瞬間にふわりと溶ける身と芳醇なタレ。すべてのバランスが絶妙だ。濃厚な「つめダレ」は、師匠が修業先の銀座の店から譲り受け、百年近く継ぎ足しされてきた貴重なもの。これも受け継いだ宝の一つである。変わりゆく伏見界隈で、街と共に新たな歴史を紡ぎ始めている。受け継いだ技と誇りと共に。
上写真:本鮪。北大西洋アイルランド沖でとれる、キメの細かい鮪を使っているのもこだわりの一つ。
中写真:穴子。半身を使うため、1尾で2貫しか取れないという贅沢さ。
下写真:23歳から修業を始めた中澤和夫さん。師匠亡き後、「惜しい」という多くの声に後押しされた。
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