こだわる大人の特選グルメ
大人のとっておきレストラン
誕生日や記念日などの特別な日は、心地よい空間でとびきりおいしい料理と共に迎えたい。
そんな願いを叶えてくれる、とっておきのレストランをご紹介。
イタリアン
【久屋大通】Lilla
東海地方の食材と器を使用した
見目麗しいイタリアン
 小さな看板が目印の控えめな店構え。その扉を開けると、モダンでありながら温かみのある空間が出迎えてくれる。カウンターの向こうに見える厨房で腕を振るうのは、オーナーシェフの奥村洋右さん。自身が40歳になる区切りの年に、イタリア料理店『リッラ』をオープンさせた。
 物腰の柔らかいシェフが作り出すのは、繊細かつ大胆な一皿だ。この日は、深く青い海のような色の美濃焼の皿に、丸いガラスの器が印象的な前菜が登場。中に潜んでいるのは、伊勢海老の味わいを最大限に引き出したパンナコッタ。上にのった伊勢海老は鮮度抜群ゆえ、軽くボイルしただけで、中はあえて半生状になっているという。
 シェフは素材の持ち味を生かすため、食材の鮮度も大切にしている。魚介類は、修業時代から付き合いのある三重県の鮮魚店から仕入れ、熊野や紀伊長島産を中心に、新鮮なものが届く。野菜も岐阜市と下呂市に契約農家を持ち、端境期以外は現地から直送されたものを使う。「旨味が全然違う」というそれらの味を生かすべく、それぞれの食材に合った調理を行うのもこだわりだ。
 魚料理の甘鯛うろこ焼も然り。「刺身で食べられるくらいの魚だから」と、あえてうろこ側だけを焼く。そうすると身はぷっくりとして、甘鯛の食感や旨味がしっかりと感じられる仕上がりになる。そこに新物ワカメと白魚のアーリオオーリオを添え、カラスミや、有機紫大根をごくごく薄く削ったものを散らした。実にアーティスティックな一皿だ。
 一方、イカスミを練り込んだタリオリーニは、真っ黒の麺に、スミイカの白、フキノトウの緑が映える一皿。麺は、手ごねした生地をパスタマシーンで仕上げた自家製だ。「アラカルトではイカスミをソースにしたパスタも提供しているのですが、コースだと大切な方と食事されるという方も多い。歯が黒くならないように、イカスミを麺に封じ込めました」と、おもてなしの心も感じ取れる。
 そんな料理の数々は、コースが中心だがディナーではアラカルトも楽しめる。一皿2人でシェアの提供も可能とのことなので、1軒目だけでなく、2軒目の店としても活躍してくれそうだ。
上写真:伊勢海老のセクルード その味噌を使ったパンナコッタ。
見目麗しいグラス仕立ての前菜。伊勢海老のダシと味噌を合わせてパンナコッタ仕立てに。その上に軽くボイルした伊勢海老、パルミジャーノレッジャーノチーズのクロッカンテ、野菜を添えた。
中写真:甘鯛のうろこ焼き ワカメと白魚のアーリオオーリオ。
刺身でも食べられるほど新鮮な三重県産甘鯛を和の技法、うろこ焼きに。身はふっくら柔らか、皮目のパリパリとした食感のコントラスト。真っ白なお皿に菜の花を添え、絵画の様な美しさが楽しめる。
下写真:オーナーシェフ、奥村洋右さん。
20代で料理の道に入り、和食店や、名古屋、岐阜、三重などのイタリア料理店で腕を磨いた後、2019年5月に独立開業。
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