数年前から火がつき、いまだとどまるところを知らない肉ブーム。赤身肉、サシが見事な和牛、ジビエなど多彩な肉を供するレストランがひしめく中、こだわりの熟成肉を提供するビストロが美食の街・泉にオープン。早くも話題を呼んでいる。
　この店で味わえるのは、あまたの凄腕シェフたちを唸らせる牛肉を提供する滋賀県の精肉店『サカエヤ』の熟成肉だ。肉の種類によって保存や熟成方法を変える“手当て”を丹念に行いながら、料理人に合わせた熟成肉を作り上げる。
「肉は真空しないで届くので、水分がほどよく抜けて旨みが凝縮される。熟成肉としての完成度は抜群に高いです」とシェフの前田啓太さんも絶賛だ。また近江牛のほかにも、あっさりとした味わいの北海道の十勝若牛や阿蘇の草原でゆったりと育てられた阿蘇のあか牛など、今がいちばん食べ頃の熟成肉を仕入れ、食通の舌を喜ばせる。「お肉好きのお客さまからは、次回食べてみたい銘柄を指定されることもあります」というから、そのポテンシャルの高さが窺える。
　こうした上質な肉を使う料理は、まずスタッフがその日最上の状態のものをプレゼンテーションすることから始まる。サシが見事なロース、真紅に熟した骨付きの塊肉など、どれも全部食べてみたくなるほど見事な肉ばかりだ。中でも評判は、強めの炭火で豪快かつ隅々まで繊細に焼き上げたTボーンの炭火焼き。噛みしめると上質な赤身肉特有の力強い旨味と甘味がじんわりとにじみ出て、咀嚼するほどに甘みのある肉汁が口いっぱいに広がる。この肉と一緒に酒を楽しむなら、ぜひメルローの赤ワインを。程よい重厚感とふくよかな甘みが、肉の味をより一層引き立てるのだ。
　またこれら炭火焼き以外にも、薩摩黒豚の濃厚なパテやリエットなどを盛り込んだ自家製シャルキュトリーの盛り合わせなど、ワインが進むアラカルトメニューが充実。どの皿もボリューム感があるので、気のおけない仲間たちと一緒にシェアしながら楽しむのもいい。熟成肉の魅力ををあらためて教えてくれる一軒だ。

上写真：十勝若牛のTボーンの炭火焼き。炭火で肉の旨味と香りをギュッと閉じ込めて焼き上げた人気の料理。若牛特有のミルキーな香りと赤身の力強い味のバランスが見事だ。ひと皿でバラ肉とヒレ肉の両方が味わえる。￥17,280
中写真：自家製シャルキュトリーの盛り合わせ。薩摩黒豚を一頭買いして部位ごとに多彩な調理法で仕上げたひと品。薩摩黒豚のリエット、旨みが濃い薩摩黒豚と鶏レバーのパテ、自家製ベーコン、柔らかいモモのハム。￥3,110
下写真：1階はテーブル席のみ。ブラウンでシンプルにまとめられた店内は落ち着いた雰囲気だ。2階にも席があり、2人からでも貸し切り可能で、接待やパーティーにも利用しやすい。