本格的な飛騨料理と旬の天ぷらが楽しめる『月の庭』。主人の谷垣内康彦さんが手がけるのは、飛騨地方の食材を使った故郷の味だ。
　「最初は郷土料理を強く意識していませんでしたが、実家の父からおいしい山菜が届いたのがきっかけとなり、多くの人に飛騨料理を広めたいと思うようになりました」
　飛騨の野菜やキノコなどを中心に多彩な料理を供するが、ここへ来たらまず味わいたいのは前菜の盛り合わせだ。ふっくらと炊き上げたなつめの甘露煮や、だしをたっぷりと含んだ凍み豆腐の煮物など、どこか郷愁をそそる優しい味わい。これらの美味に合う酒ももちろん飛騨の酒蔵から取り寄せる。店を通じて飛騨の食文化を発信し、その魅力を感じてもらいたいと常に考えているゆえの盤石のラインナップだ。
　季節の食材を使った天ぷらもまた評判を呼ぶ逸品。油ものが苦手な人でもおいしく食べられるよう、衣に工夫を凝らして軽い食感に仕上げる。話をしながら絶妙なタイミングで揚げたてを供するのも、谷垣内さん流のもてなしだ。秋からは飛騨のタマゴダケやヒラタケも登場、楽しみは尽きない。

上写真：高山市周辺で栽培される宿儺かぼちゃは煮物や天ぷらに。他にも甘長ピーマンやミョウガなどの旬の野菜をたっぷりと使用。
中写真：天ぷらの盛り合わせ￥1,980の一例。
車エビ、三河産のアナゴ、小鮎、ミョウガ、宿儺かぼちゃ、シャドークイーン、甘長ピーマン。
下写真：主人の谷垣内康彦さん。
1967年岐阜県高山市出身。服飾関係の仕事から料理人に転身。料亭や割烹、ホテルの和食店などで腕を磨き、2000年に開店。