「アシェットデセール」とは、フランス料理のコースに供される皿盛りデザートのこと。旬のフルーツを駆使し、精密に美しく仕上げられたデザートはまるで芸術作品のようだ。このアシェットデセールの専門店が、星ヶ丘にある『リリック』だ。
オーナーパティシエの近藤祐香理さんは、200年以上の歴史を誇るフランスの名店『ラペルーズ』や、東京の店でパティシエとして修業した実力派。「オーダーを受けてから作り、温かいものや冷たいものもその場で味わえる。ケーキでは表現できない魅力を伝えたいと思いました」と話す。メニューは常時3皿。これまで培ってきた技術に、本場パリで流行っている表現などを取り入れながら、オリジナルのアレンジを加える。また、フルーツなどの食材は基本的にフランス産を使うが、日本の旬に合わせて地元のものを取り入れることもあるという。「例えばフランスではみかんを使うことはありませんが、時期になると地元のみかんを使うこともあります」と近藤さん。
こうして仕上げられるデセールは盛付けも味も繊細で、近藤さんの豊かな感性が感じられるものばかり。イチゴをゆっくりと湯煎にかけて抽出した果汁にコニャックの香りを漂わせたスープは、甘酸っぱさの中にほんのりと芳香が漂う大人の味わい。「口に入れた時にどう感じてほしいか考えます。お出しした瞬間も召し上がった後も、イチゴの真紅が印象に残るようにイメージして作ります」その言葉のとおり、五感をフルに楽しませてくれるひと皿は“飾らない日のとっておき”に味わいたい。

上写真：フレッシュサングリアとショコラのタルト。サングリアの酸味がチョコの甘みを引き締める。
中写真：イチゴとコニャックのスープ仕立て。いちごのチップスがアクセントに。
下写真：グリーンを基調とした店内には、大人びたフランスの香りが漂う。