こだわる大人の特選グルメ
ちょっと足をのばして行きたい郊外のレストラン
そこでしか食べられない味を求めて、休日は家族や大事な人と郊外へドライブに出かけたい。
その地の風土を感じながら、知られざる新たな味に出合える珠玉の料理店へ。
和食
【三重・多気町】鄙茅
里山と清流の風景に包まれ、
四季を五感で味わう料理店
のどかな田園風景と茶畑の向こうに、茅葺の三角屋根が見える。郷愁を呼び覚ます風景の中、その建物までゆっくりと歩を進める。

暖簾をくぐって奥へ。すると、目の前に広がるのは清流・宮川の絶景。美しい蛇行を描いて流れる川、陽光を受けて輝く碧の水面、対岸の山々の眩しい新緑。聞こえてくるのは、せせらぎの音の鳥のさえすりだけ。

慶応元年(1865年)創業、元祖・鮎の甘露煮で知られる『うおすけ』が150周年を機にオープンした料理店『鄙茅』。

始まりは、五代目社長の茶谷明樹さんが40年前に描いた「いつの日か、清流を望む里山で鮎を食べられる店を」という夢。探し求め、遂に出合ったのがこの地だった。思いを受け継ぐ六代目の公隆さんは言う。「美しい里山の風景を残すため、一万坪の敷地を取得し、伊勢宮川の里と名付けました。テーマは伝承。この風景を100年先まで伝えていくことが私達の目標です」

この“里”に新築された料理店は、伝統的な農家を再現しており、ここに存在し続けていたかのように風景に溶け込む。中には竃もあり、通常隠される屋根裏の梁や垂木、茅の造作を見せているのも文化伝承の意味からだ。どこからでも清流を眺められるよう、屋根の一部を切り込むなど、工夫も凝らされている。

料理は懐石コースのみで夏は鮎が中心。甘露煮はコースに含まれないが、店内で販売されているものをその場で頂くこともできる。

料理長の松原京介さんは、高校生レストラン『まごの店』で有名な多気町の相可高校食物調理科の出身。京都嵐山の『吉兆』で約9年間修業し、磨いた腕を地元で振るう。「地域の食材はもちろん、五感すべてで旬を感じてほしい」と語り、歳時記なども織り込むその料理は、周囲の自然と相まり四季の感動を生み出す。

この店は、清流と共に歩んできた老舗の新たな歴史への第一章。故郷の風景を未来へ繋いでいく構想は、さらなる章へと続く予定だ。
上写真:夜のコース(夏)¥8,640の向付一例、焼き海老と夏野菜。
中写真:夜のコース(夏)¥8,640の焼物一例、鮎の塩焼き。
下写真:建物は「おかげ横丁」を手掛けた設計士と職人によるもので、伝統技術の継承としても価値が高い。
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