こだわる大人の特選グルメ
ちょっと足をのばして行きたい郊外のレストラン
そこでしか味わえないひとときを求めて、休日は家族や大事な人と郊外へドライブに出かけたい。
その地の風土を感じながら、知られざる新たな味に出合える珠玉の料理店へ。
会席料理
【愛知・半田】粋香
完全予約制の会席料理で、
おもてなしの心を伝える
 半田市のやや南、知多半島を縦断する南知多道路にほど近い、静かな住宅街。小高い丘の麓に佇む『粋香』は、京都祇園の名店『楽楽』で修業を積み、名古屋の料亭で副料理長を務めた鈴木恒志さんが営む、完全予約制の日本料理店だ。
「創作和食ではなく、正統派の会席料理が食べられる店を作りたかったんです。場所は、名古屋か地元半田かで迷いましたが、地元で本物の会席を出す店をぜひ作ってみようとこちらを選びました」
 同店は、オープン以来「わざわざ名古屋まで行かなくても、上質な料理とサービス、空間を兼ね備えた店ができた」と地域の食通や名士たちに重宝されてきた。2019年にはミシュランにも掲載され、名実ともに地域を代表する日本料理店として名を馳せている。
 店内は、御影石の並ぶ庭園を見渡せる一面ガラス張りの広間に加えて、個室が1室。空間に十分ゆとりをもたせた配置であったが、昨今の時勢を鑑みてテーブル数を1卓減らし、一度に利用できるのは、最大でも4組までとした。また、違うグループ同士で向かい合わせになる人が出ないように衝立も用意している。
 「基本的な対策以外は、特にこれまでと変えていません。当たり前のことを丁寧に、普段どおりにしているだけです」
 本来あるべきもてなしの姿というものは、時代がいかに変わっても一貫しているものなのかもしれない。
 供するのは、京料理をベースに旬の天然素材を使用した会席コースのみ。奇を衒ったことはせず、その季節ならではの素材の味をしっかり立たせるのがポリシーだ。特に、日本料理の要とも言えるだしは、一年寝かせた真昆布とキハダマグロ節を使用して、調理の度に毎回一番だしを引くというこだわりよう。まろやかな旨みと華やかな香りが、全国から取り寄せた選りすぐりの素材同士を繋いでいる。「京料理は薄味」というイメージが覆されること間違いなしだ。
 「量ではなく、素材と質で勝負しています」という言葉どおり、どの一品も正統派ならではの安心感があり、慶事や接待の場として選ばれてきたのもうなずける。おもてなしの心を伝える席にふさわしい一軒だ。
上写真:優しい風合いの土壁に桜材のテーブルを配した個室。人生の節目の祝事や両家の顔合わせなど、慶事の席にふさわしい。
中写真:郡上産天然鮎土釜ご飯。
赤楽の土釜を使用した天然鮎の炊き込みご飯は、実山椒の鮮烈な香りが食欲をそそる。秋は松茸や天然アナゴも登場するなど、季節に合わせた具材を使用する。
下写真:賀茂茄子、北海道産毛ガニ、汲み上げ湯葉の冷やし鉢など。
海山の幸を盛り合わせて四季を表現する八寸は、料理人のセンスが光る。塩ウニは生ウニから手作りするなど、手間を惜しまない。
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