こだわる大人の特選グルメ
ちょっと足をのばして行きたい郊外のレストラン
そこでしか味わえないひとときを求めて、休日は家族や大事な人と郊外へドライブに出かけたい。
その地の風土を感じながら、知られざる新たな味に出合える珠玉の料理店へ。
中華・創作料理
【三重・松阪】レストラン カルティベイト
独自の感性で仕上げる
三重県の素材や器にこだわったひと皿
 緑豊かな風景が広がる一角に佇む、話題のレストラン。まるで工房のような建物は、使われていなかった倉庫を改築したものだ。
 「手つかずな雰囲気がとても素敵で、これを活かして店を作ろうと主人と話し合いました」と奥さんの山本陽子さんは笑顔を見せる。その言葉どおり、天井の高い倉庫は開放的な吹き抜けの空間に生まれ変わり、1階は客席、2階はギャラリーに。もとは出入り口だった所には大きな窓を設え、四季折々の表情を楽しませてくれる。
 店のコンセプトは「三重の人たちと仕事をする」ということ。東京で腕を磨いてきたオーナーシェフの山本祐也さんは故郷の三重県に戻り、地元の食材の力強さに感動したという。「県外から訪れる人にはここでしか味わえないものを、地元の人にはあらためて地元の食材のよさを提案したいと思い、なるべく半径を狭めたところから仕入れようと思いました」と祐也さん。魚介は三重県内の漁港から、豚肉は契約養豚場から、野菜もまた農家から直接仕入れる。これらの新鮮な食材を使い、修業時代に培った中華の技を活かしてオリジナリティ溢れるひと皿を作り上げるのだ。
 「特に中華料理を意識しているわけではありません。せっかくおいしい旬の素材の味を最大限引き出せるように、様々な調味料を使って自由に料理します」と話す祐也さんは、スパイスやハーブを巧みに使って料理する。脂の旨味も楽しめるようにしっとりとレアに焼き上げた紀伊長島の寒ブリ、希少な松阪大石牛に薫香をまとわせたひと品など、各素材が持つ美味を余すところなく表現したものばかりだ。これらの料理を盛り付ける個性的な皿もまた、二人がこだわって集めたもの。料理との組み合わせを緻密に計算して組み合わせた、そのセンスは秀逸。五感をフル稼働して味わうひと皿はまた格別だ。「カルティベイトとは“耕す”という意味。土を耕して自然農にも取り組み、食を耕し、豊かな時も耕す。ここの食や器、空間が何かを感じるきっかけになってくれたら嬉しいです」
上写真:紀伊長島産寒ブリの花山椒ステーキ焦がしバターと生醤油のソース。
塩コショウでレアに焼き上げた寒ブリはしっとりとした食感。三重県の醸造場で特別に作ってもらう生醤油の香ばしいソースと、ピリッとした花山椒がアクセントだ。¥2,860
中写真:松阪大石牛の瞬間スモーク。
包みをパリッと破いた瞬間、ヤマザクラの薫香がふわりと漂う。松坂牛飼育の2倍の時間をかけて丁寧に育てられる大石牛は旨味が強く脂はあっさりとした味わいだ。¥5,060~
下写真:オーナーシェフの山本祐也さん。
1977年三重県生まれ。21歳で料理の世界に入り、東京の中華料理店で8年間研鑽。その後に健康食を主とするマクロビオティックの店で3年間勤めた後、地元に戻って2010年に開店。自然農で自家製野菜の栽培も行っている。
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