その黒い鍋が運ばれてきた瞬間、心が躍ってしまった――。鍋はメイドイン名古屋の鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」。蓋を開けると、ざく切りにした鰻がびっしり！『うな和』の名物メニュー・釜まぶしである。鰻の下にはごぼうと薄揚げ、鰹だしを加えて炊いた、炊き込みご飯。淡口に炊いたご飯は、米本来の甘味や風味が引き出されている。
「鰻はシンプルな料理です。だからこそ、鰻と米だけにはこだわり尽くさないと」
　そう語るのは料理長の石垣 毅さん。米は長野県の農家と特別契約をし、鰻に合う糖度の高い米を仕入れ。毎日使う分だけを精米しているという。釜まぶし以外のメニューは炊飯器で米を炊き上げているが、米のポテンシャルを引き出すべく、考案されたのがこの釜まぶしというわけだ。
　鰻は時季によって産地は異なるが、地元・三河一色や鹿児島産の中から、肉厚で大きめサイズのものを厳選。店内に立場があり、浄化水を流し続けて鰻の泥を吐かせているという。これらを毎朝開いて串打ちし、蒲焼に。タレは、五分だまりなど2種類の醤油をブレンドし、極上みりんとザラメを加えて仕込んだ自家製。甘口だがさっぱりとしていて、鰻のおいしさを堪能できる風味だ。釜まぶしや、ひつまぶしには〝追いダレ〟ができるよう、タレが別添えされるのも嬉しい。
　鰻が焼けるまでに、酒の肴をつまみ、晩酌を嗜むのも一興だ。単品もあるが、小鉢などがセットになった御膳セットを注文するのがおすすめ。鰻が入った茶碗蒸しや刺身、小鉢などが付くので、ウナギが焼き上がるのを待ちながら、つまむのにちょうどいい。
「自宅でひつまぶしやうな重を楽しみたい」という人に向けてのお持ち帰りメニューも充実。贈答用重箱もあるので、大切な人への手土産にしても喜ばれそうだ。
　研究し尽くした食材と調理法、サービスには恐れ入った。ここは鰻店の新星と言えよう。

上写真：名物 釜まぶし2人前。
バーミキュラで炊いたご飯の上に焼いた鰻をのせ、蓋をして蒸らしてある。注文は2人前より。40分かかるため、要予約。￥9,900、特上￥12,980
中写真：小さめひつまぶし＋御膳セット。
刺身、小鉢2品、茶碗蒸し、デザートがついた御膳セット。これに、好みのご飯ものと一緒に味わうのがおすすめ。￥3,080＋御膳セット￥1,320
下写真：料理長の石垣 毅さん。
1974年福岡県生まれ。19歳より『なだ万』で17年間腕を磨き、同店の香港支店でも経験を積む。『帝国ホテル』の副料理長などを経て名古屋へ。