こだわる大人の特選グルメ
大人のとっておきレストラン
誕生日や記念日などの特別な日は、心地よい空間でとびきりおいしい料理と共に迎えたい。
そんな願いを叶えてくれる、とっておきのレストランをご紹介。
寿司
【丸の内】寿し道桜田
熟練の技が光る
「名古屋前」の握りをワインと共に賞味
 鮨屋のカウンターに座ったら、まずは好きなつまみや鮨を2.3貫注文して、酒とともに味わうのが定石。だが、ここではその決まりがない。まずは主人の太田雄斗さんが目の前で手際のよいシャリ切りを披露し、そのシャリをおろしたてのワサビと海苔で供する。他の鮨屋では見られないこのもてなしが桜田流だ。米は大粒で甘味が強い豊橋のブランド米〝女神のほほえみ〟を使い、岐阜・大垣へ足を運んで汲み上げる湧き水で炊く。
 「寿司の命はネタが4、シャリが6。まずは米本来の味、それから握りとの違いを楽しんでもらいたいですね」
 赤酢がじんわりと染みた甘くふくよかなシャリの味と、ワサビの芳香が口の中で一体となって広がり、この後に続く握りに自然と期待も高まる。
 太田さんが腕を磨いたのは、三つ星の店の中でも名高い『銀座久兵衛』。そこで身につけたことはすべて今に活かされているという。まずはネタ。太田さんは使う魚介のほとんどを、修業時代から付き合いのある豊洲市場から仕入れる。「全国からよい魚が集まり、種類も多く安定しているから」というのがその理由だ。仕入れた魚介は、氷で冷やす昔ながらの冷蔵庫で保存する。魚にとって一番よい状態を作ること、これも修業先で学んだことだ。
 鮨職人でありながらソムリエの資格を取ったのも、お客様にワインを勧める際にきちんと説明できるようになりたいと思ったからだ。「例えば寿司とシャブリ、という一般的な組み合わせだけではなく、ネタとの相性やお客様の好みに合わせて最上の一杯を提案したいと考えました」
 この店で揃えるのはビオワインだ。「ワインのすっきりとした酸とミネラル感が、魚介の旨味を引き立ててくれます」
 無論、主役のネタや米、ワインに限らず、三重の赤酢や大垣産のワサビ、半田産の醤油など、調味料にも徹底したこだわりを貫く。これらの素材や調味料を駆使して仕上げる鮨は江戸前ならぬ名古屋前だとか。「東京の鮨屋とは違うものを提供したい」と太田さん。名店で培った揺るぎない技と極上の素材で握る鮨は、名古屋の鮨界に新たな風を吹かせてくれるに違いない。
上写真:鮨は左から脂ののった大トロ、すだちで締めたコハダ、塩と柚子の香りをまとわせたアオリイカ。酸とミネラル感のバランスが秀逸なローラン・ピヨ(1杯¥1,650)と相性抜群。
中写真:一年を通して脂のノリがいい長崎・対馬産の穴子を酒と水で煮てから蒸し上げる。穴子の旨味を損なわないようタレは軽めの味わい。ふんわりとした食感と白身の優しい甘さが特徴。
下写真:主人の太田雄斗さん。
1990年生まれ。名古屋市出身。専門学校を卒業後、東京・銀座の「久兵衛」で5年間修業。その後ソムリエの資格を取得し、2019年3月に開店。

※ランチは¥11,000(税込)
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