こだわる大人の特選グルメ
大人のとっておきレストラン
誕生日や記念日などの特別な日は、心地よい空間でとびきりおいしい料理と共に迎えたい。
そんな願いを叶えてくれる、とっておきのレストランをご紹介。
創作和食
【新栄】乙味あさ井
おもてなしの心遣いに満ちた空間で楽しむ
ビジュアルも秀麗な季節の美味
 名古屋のメインストリート、広小路通沿いに立つビルの2階。白地の隅に「乙味」と小さく染めたシンプルな暖簾をくぐると、町の喧騒は遠のき、穏やかな雰囲気をまとった店主と女将が迎えてくれる。昨年12月15日にオープンした『乙味 あさ井』は、蕎麦の名店『紗羅餐』のミッドランドスクエア店で長年料理長として腕を振るった浅井昭博さんが夫婦で営む和食店だ。昼はコースが2種類のみで、華やかな八寸盛り合わせに始まり、風味を存分に生かした手打ち蕎麦でシメる構成。「旬の食材を取り入れるのはもちろん、日々の気温やその日の気分によっても少しずつ料理に手を加えています」と主人の昭博さんは語る。ひとつとして同じメニューはなく、一期一会ともいえる季節感あふれる味を存分に楽しませてくれる。
 料理の特徴のひとつに、和だしへのこだわりが挙げられる。カウンターにある大型の鰹節削り器を使い、毎朝店で削ってからだしを取る。鰹節は鹿児島県産の本枯節と、荒節の2種類をブレンド。さらに利尻昆布を用いた和だしが、様々な料理のベースになる。そして、基本に忠実な和食の技に絶妙な加減で加えるフレンチやイタリアンのエッセンスが、料理人としてのオリジナリティを際立たせる。鯖寿司に使う赤酢にバルサミコ酢を少し加えるなどさりげないものから、白和えにバジルを加えるなど大胆なものまで、その加減は変幻自在。コースを通して味の幅と深みを与えている。
 躍動感ある盛り付けにも注目したい。趣のある器や皿をキャンバスに、時に立体的に、時に色彩豊かに、季節の情景を描き出す。取材時に用意してもらった鮎は、川の中で泳ぐ生き生きとした様子を再現。変化に富んだ日本の季節を、目で、舌で堪能できる。
 このように昼も夜と変わらない力の入ったコースを楽しめるとなると、少し酒もいただきたくなるもの。店では特に日本酒に力を入れており、柔らかく飲みやすいものからどっしりとした旨口まで幅広く揃えている。「料理に合わせたペアリングもご提案できるので、お気軽にお尋ねください」と女将。カウンターのみのこぢんまりとした店では店主、女将と客との距離が近く、心温まるアットホームなもてなしもうれしい。店名通り乙な味を楽しみ、優雅な昼のひと時を過ごしたい。
上写真:季節の八寸盛り合わせには、長野の農園から届く産直野菜や、長年つきあいのある柳橋市場の鮮魚店から仕入れる魚介類など、7~8種類を盛り込む。変わり白和えや卵黄味噌漬け、鯖寿司などが評判。
中写真:生きた鮎を海水で泳がせ、身に海水の味を染み込ませてから調理した泳ぎ鮎の塩焼き。コンベクションオーブンを使い、頭や骨まで柔らかい焼き上がりに。
下写真:主人の浅井昭博さん。1978年生まれ。清須市出身。和食店で約2年間勤めた後、『紗羅餐』へ。ミッドランドスクエア店では8年もの間、料理長として活躍。昨年12月に念願の独立を果たす。

※料理はすべて丁-ひのと-昼限定コース¥5,500の一例
DATA